最強の経営手法TOC



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日本版TOC導入事例の企業変革ストーリ

ゴールドラット博士の“ザ・ゴール”が日本で出版される前に、JMACのコンサルタントの指導の下、会社の体質強化のためにTOCを導入した三重県名張市のオキツモ株式会社の企業変革ストーリーである。今では、オキツモはTOC導入企業が見学に来る会社である。

オキツモという会社は、所謂日本の元気な中小企業で、例えば、2006年度の恩賜発明賞を受賞したTOTOの光触媒を塗料化している。それ以前から、耐熱塗料という特殊塗料では日本の半分以上のシェアを有する優良企業であった。しかし、現会長の山中克敏氏、社長の山中重治氏(当時常務)が、社内にある停滞したムードを打破すべく、企業改革に取り組んでいく。

本書の前半は所謂導入部分であり、オキツモの現状の問題点やTOCの説明が中心で、ちょっと冗長な感じがするが、後半は社員の意識が変わっていく様子や役員層の素早い意思決定による組織変更や人事異動がダイナミックに行われ、ストーリーの引き込まれていく。本書は、所謂TOCの理論や手法の解説本ではなく適用事例の本のため、TOC手法の細かいところは良く分からないので、従来の企業変革モノとの違いがあまり感じられない。しかし、ゴールドラット博士の著作とは異なり、トップ層の強い意志に加え現場のリーダー層のリーダーシップによるボトムアップが上手く噛み合って企業変革が進んでいく「日本版TOC」の事例と言える。

会長の山中克敏は元気な中小企業に有り勝ちなカリスマ的存在感を出しているが、それでも経営の世代交代を進めるべく、次の世代へ権限委譲していく様子が、経営者としての非凡な才能を感じさせている。
現実的なTOC導入

TOCに関する本には思考プロセスやクリティカルチェーンなど
ツールに関する説明が書いてあるものが多い。

この本はそういったツールについて厳密に理解していなくとも
制約条件を探して集中的に改善するという基本が理解できていれば
TOCの導入は効果があることがよくわかる。

理論やツールの理解に走りがちなところを

また違った角度から考える事が出来た点がよかった。
妙にリアルな、等身大の変革ストーリー

これは、小説じたての企業事例である。
タイトルは「肩肘張ったビジネス書」のようでも、いったんページを開けば、気楽に読めるストーリーが展開する。お勉強するというより、自宅のソファや通勤電車で読むほうが適した本だ。

物語の舞台は、オキツモという実在の塗料メーカー。

TOC(制約条件の理論)を2000年に導入し、「儲ける集団」へと2年間で成長したプロセスを追っている。

『ザ・ゴール』で知られるように、TOCはもともと工場の生産効率を高めるための考え方。
それを会社全体に当てはめてみると、「儲け」を妨げる制約条件が取り除かれ、儲けの効率が高まるというのだ。

とはいえ、新しい経営手法の導入は、社員たちに何かと無理を強いるもの。
どれだけ優れた考え方でも、理論や理屈では!通らない状況が生まれ、泥くさい取り組みが次から次へと必要となってくる。

それだからこそ、本書はあえて小説のかたちで表現するしかなかったのかもしれない。

オキツモの社員たちも、最初から素直にTOC活動をスタートさせたわけではない。抵抗勢力や誤解はどこにでもある。
その点で本書は、TOCの考え方を紹介した本と違って、等身大の活動状況がわかる、妙にリアルな内容となっている。

著者はオキツモのCEO兼会長。自社のTOC活動を振り返り、山あり谷ありを誰に遠慮することなく描いたのだろう。著者の視点や表現は、従来のビジネス書と較べて一風変わっている。

今後は、この種のビジネス書も多く出てくることだろう。
TOC事例の雛形

生産現場での在庫削減、材料投入から製品出荷までの製品リードタイム短縮をめざすかのように思われていたTOCを否定し、全社レベルの改革を必要とし、支援する考え方であることを主張した本だと思う。SCM関連書でも必ず指摘されるように、部分最適から全体最適を目指すというスローガンは頭で分かっていても、実際叶わないことが多い。

本書を読んで、販売、生産、購買、開発の各職能間のインターフェースがうまく統合されていない組織は、他部門に責任の所在を求めがちであり、その議論の中からは何も生まれないことを再度確認した。スループットを増大させるという理解しやすい考え方のもと、組織を見直し、インターフェースのあり方を再構成する流れが克明に描かれていて大変参考になった。

大業であれ、中小企業であれ、どんな企業でも抱えている慢性的な問題の解決に考え方の雛形として刺激のある本だと思う。



日経BP社
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